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足湯

夜、バーサンをベッドに移すとき
足に触れたら、ひんやり冷たかった。
このままでは、寝つけないだろうと、
バケツにお湯を汲んできて、
バーサンをベッドに腰掛けさせて、足湯。

しばらく浸し、手でなでると、ふやけた垢がういてくる。
デイサービスでも、ショートステイでも、
足の指の間まで洗ってやる余裕はないだろう。

差し湯として、すこし熱めのお湯をたし、しっかり暖まってもらう。
「ああ、いいきもちだ」
バーサンがいう。
「足が暖かいと、からだじゅう、ぽかぽかして、良い気持ちだ」
「うん、あったまったところで、ゆっくり寝てね、おやすみ」

布団を掛けて、明かりを暗くしても、バーサン
「ああ、いいきもちだ。あったかくて。ありがたや、ありがたや。
 おら、オババに、こんなことしてやらなかった」

あら? バーサン、自分のお姑さんのことを、ふと思い出したのかな。
オババは、大昔、たしかわたしが三歳のときに亡くなっている。
今みたいに、水栓をひねればお湯が出る時代とちがうけど、
でも、バーサンのことばが、嬉しい。介護の疲れも、ほっと癒えます。
ありがとう。





…と、寝かしつけて、シゴトをしていたら、〇時過ぎ
バーサンの部屋の方から声がした。
なんだか、哀しそうな声。
きっと、一眠りして、目が覚めたんだ。

飛んでいったら、あらら、バーサン、両手に顔をうずめて泣き声だしてる。
「みなさんが、お気を遣ってくださって、仕事して……」
ん?
「いま、わたしシゴトしてたのよ、仕事できるのは幸せな事よ」と、わたし。

「みなさんが、仕事の事を偽装して、わたくしのことを考えて
気を遣ってくださって。学校の事も、もう勉強は済みましたから
どうぞ、わたくしの事は、ご放念ください」
ん? 偽装?  ご放念?

なんか、すごいよ、バーサン。
言っている内容は、つじつまが合わず、意味不明だけど
わたしのふつう使う語彙にもないような、むずかしい言葉を、
耄碌した(認知症の)年寄りが使うなんて。
嘆き悲しんでいるバーサンには悪いけど、笑っちゃったよ。

おむつを替えて、なだめすかして
水を飲ませて、それでも泣き声で繰り返すので
エンシュアリキッドを吸い飲みにいれて、一缶の半分ほど飲ませたら
ようやく、落ち着いてきましたけどね。

上の「おら」という方言と、下の「わたくし」という挨拶言葉
使い分けているのが、面白かったわ。
さすがバーサン、知性と教養にあふれてますね、ぼけても。
うふふ。
by hidaneko | 2007-03-28 21:43 | かいご | Trackback | Comments(2)
Commented by ひろ@奈良 at 2007-03-29 06:25 x
足湯をしてあげましたか。
身体全体が暖まるのですよね。
鍼灸の「つぼ」と関係があるのでしょうかね。
でも、妻は足が暖まると眠れないと言って、布団から足を出して寝ています。
Commented by hidaneko at 2007-03-29 10:24
>ひろ先生
>妻は足が暖まると眠れないと言って、布団から足を出して寝ています。

そういうお方がうらやましいです。
わたし自身、冷え性なので、バーサンのつらさがよくわかって。
もっと頻繁にしてあげればいいのですが、腰痛と相談しながらです。


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