人気ブログランキング |

まど・みちおさんの訃報に接し…

詩人 まど・みちおさんが亡くなった。
104歳、老衰だったとのこと。

ニュースを目にしたとき、最初に浮かんだ言葉は
「ありがとうございました」だった。

沢山の心に残る良い詩をありがとうございました。

まどさんの詩には、蚊やアリの視点と宇宙の視点がある。
まどさんの詩を読むことで、時間と空間を超越して
一瞬にしてわたしの視点も広がるのだ。
ものの見方が、ぐーんとひろがります。

総てのものを愛しているのが伝わってくる。
蚊も、こぐまも、野菜も、
「そのままでいいんだよ」と肯定される、安心感。嬉しさ。

「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」など、小さい頃から歌ってた。
大人になって、まどさんと再会するきっかけになったのは
工藤直子・編、『せんねん まんねん』(童話屋)だった。
工藤直子さんの目を通った、まどさんの詩、新鮮だった。

「せんねん まんねん」「ポポン…」「ヘビ」
知らなかった、こういう世界を描いていた詩人だったのか、と。

たとえば…
  「カ」

ゆうがたに なると
きまったように
カが ごはんを たべにくる

ほうら わたしが
ごはんを たべにきましたよ
わたしに たべられない さきに
わたしを たたかなくても
いいのですか
と いいながら

カは
そう いいながらでしか
ごはんを たべに こられないのか
一にち 一かいの ごはんを

カよ!

そして、また……
  「やまびこの小さなまご」

やまびこの
一ばん小さな まごのことを
それはそれは小さな まごのことを
ごぞんじですか

カの なかよしでしてね
ねても さめても
カとつれだって あそんでいるのですよ

よく さびしい 夕がたなんかに
カが うたいながら
とんでくるでしょう
ほそいけむりのような 二本のうたを
よりあわすように しながら

あれは カが うたう はしから
やまびこの 小さな まごが
うたいかえして いるのですよ
いちいち それに こたえて…


まどさんのお蔭で、わたしも小さなものに寄せる視点を得る。
ああ、本を持ち出して、書き写していると、
どれもこれも、書き写したくなる。
おもて表紙をめくったところに、まどさんのサインがあり
うら表紙をめくったところに、工藤直子さんのサインがある
小さな、文庫本サイズの詩集。

もうひとつだけ、書き写しますね。
わたしが、今ある元、というか、恩になった詩。
発想の転換というか…
  「コップ」

コップの中に 水がある
そして 外には 世界中が

コップは世界中に包まれていて
自分は 水を包んでいる
自分の はだで じかに

けれども よく見ると
コップのはだは ふちをとおって
内側と外側が一まいにつづいている

コップは思っているのではないだろうか
自分を包む世界中を
自分もまた包んでいるのだと
その一まいの はだで
水ごと すっぽりと

コップが ここに坐って
えいえんに坐っているかのように
こんなに静かなのは…

なんだか満たされなくて、心が空っぽみたいで
誰かに愛されたくて 物欲しくて 沈んでいた時に
この詩に出あって、発想の転換が出来た…
内包して内にとりこまなくても、外に包まれている
外包というか、豊かな世界中に 包まれている自分がいる、
と、いうことに、気づかせてくれた詩。
でんぐりん!と、発想の転換のきっかけになった詩。


それから
伊藤英治・編『まど・みちお全詩集』(理論社)を、思いきって買って
(だって、貧乏だった私に¥4800は高かったんだもん)
もっと沢山の「まど・みちお」に出会えたのだった。

まどさん、まど・みちおさん
いっぱい、いっぱい、ありがとう。
ご冥福をお祈りします。

(バーサンと同じ104歳だったのですね)

まど・みちお全詩集

まど みちお / 理論社

せんねんまんねん (まど・みちおの絵本)

まど みちお / 理論社

せんねん まんねん―まど・みちお詩集

まど みちお / 童話屋


いっぱい やさいさん (至光社国際版絵本)

斉藤 恭久 / 至光社


↑これは、読み聞かせでよく使わせていただいてます。
自分は、自分でいることに、喜んでいる、自己肯定感の詩。
赤ちゃんから、何歳でも…。



【社会】
「ぞうさん」いのちの賛歌 まど・みちおさん死去
2014年2月28日 夕刊
f0016892_22294831.jpg2009年11月
まど・みちおさん












 童謡「ぞうさん」などで知られ、戦後を代表する童謡詩人のまど・みちお(本名石田道雄=いしだ・みちお)さんが二十八日午前九時九分、老衰のため東京都稲城市の病院で死去した。百四歳。山口県出身。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は長男石田京(たかし)氏。

 小学生時代に台湾に渡った。台北工業学校土木科を卒業し、台湾総督府に勤務。児童誌に投稿した童謡が北原白秋に特選とされ、童謡を作り始めた。

 応召してシンガポールで敗戦を迎え、復員後に上京。児童誌「チャイルドブック」の編集をしながら童謡や詩を発表。「ぞうさん」は團伊玖磨さんが曲を付け、一九五二年にラジオ放送されて人気に。

 六八年、第一詩集「てんぷらぴりぴり」で野間児童文芸賞。「まど・みちお全詩集」(九二年)は九三年の芸術選奨文部大臣賞。九四年には日本人初の国際アンデルセン賞に。「やぎさんゆうびん」「一ねんせいになったら」「ふしぎなポケット」などの童謡を残した。

 集大成といえる「まど・みちお全詩集」には、太平洋戦争時に書いた戦争協力詩二編も収め、そのあとがきをざんげに費やして自身の非力さを終始責めた。

◆「たったひとつの存在尊い」
 童謡「ぞうさん」には、人間の子どもに対するメッセージが込められていた。「『鼻が長い』と言われればからかわれたと思うのが普通ですが、この子ゾウは『お母さんだってそうよ』『お母さん大好き』と言える。素晴らしい。人の言うことに惑わされて、自分の肝心な部分を見失ってしまうのは残念です」

 二〇〇九年、百歳を迎え新作詩集「のぼりくだりの…」などを出版し、創作意欲衰えぬまどさんを取材した。節くれ立った指、ほおに深く刻まれたしわ。入院先の談話室に車いすで現れたまどさんの、樹齢千年の巨木のような存在感に圧倒された。耳が遠く、認知症も進んだまどさんとのやりとりは、はた目にはかなりとんちんかんだったかもしれない。だが、その言葉はどれも私の想像をはるかに超え、ものごとの神髄を突いていた。

 「世の中にいきるものはすべて、たったひとつの存在です。そのものが、そのものであるということ。それだけで、ありがたく、うれしく、尊いことです」

 「池の水面をアメンボが動くと、アメンボの周りに輪が広がります。不思議だなあと思います。あんなに小さいものが、あんなに大きな水を動かすなんて」

 「ぼくはタタミイワシを毎朝パクパク食べるのに、腕にとまった蚊はかわいそうで殺せない。矛盾だらけです。生きものの命を食べずに生きている生きものはいませんが、食べない生きものまで殺すのは人間だけです」

 私は用意してきた質問を封印し、ひたすらまどさんの口から発せられる言霊をひと言も聞き漏らすまいと、耳をすました。

 「生きていると必ず、毎日、新しく見つけるものがあります」。詩作への意欲は、年を重ねてますます旺盛になった。原動力は世の中への「不満」。「遠くのものにも、近くのものにも。政治家に、警察の人に、学校の先生に。金もうけ、いんちき。無学の私も言わずにおれない現状です。戦争もなくなりません」。百年生きて書くことがなくなるどころか、今だから書かねばという強い姿勢。もっともっと生きて書いてほしかった。 (井上圭子)
by hidaneko | 2014-02-28 21:20 | ほ ん | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://hidaneko.exblog.jp/tb/21502522
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 今週のたなくじ 同じ画像を見ても感じ方が違う件 >>