「おもかげ復元師」「おもかげ復元師の震災絵日記」

おもかげ復元師 (一般書)

笹原留似子 / ポプラ社


おもかげ復元師の震災絵日記 (一般書)

笹原留似子 / ポプラ社


昨日、今日とこの二冊の本を読んでいた。
3月23日、ツイッターで大野更紗 Sarasa Ono ‏さんが
「岩手の、看護師で復元納棺師、笹原留衣子さんの記事が「be」に。『おもかげ復元師』は震災についての本のなかでも、すばらしい本だった。」と書かれていた。
図書館で検索したら、こちらの図書館にも入ってた。
すぐに予約を入れて、取り寄せて読んでいた。





わたしも納棺師の方には、バーサンの時にお世話になった。
一緒に湯潅し、死に装束を調えた。バーサンの気に入っていた和服を着せてやれた。穏やかな顔でお送りできた。

いつだったか、こちらの地元の新聞の投稿欄にこんな記事を見た。
「納棺師のひとが亡くなった人をきれいにしすぎて、ふだん化粧はしなかった人が、きれいに化粧されて違和感があった。自分の時はそのままにしておいて欲しい」という意味のことが書かれていた。

笹原留衣子さんは書かれている。「作るのではなく、戻す」のだと。
ああ、そうなんだ、と思った。失われてしまったその人のおもかげを取り戻すのだ、と。それで、タイトルの「おもかげ復元師」に魅かれて読み始めたのだ。

本の章に「死後変化は誰にでも起る」とある。
たしかにそうだ。バーサンの場合、顔に白布はかけなかったのだ。死を穢い物、厭うものだとはおもわなかったし。バーサンの最期が穏やかだったおかげもあると思う。
それでも、友引などの関係で、通夜までふつうより1日よけいに家にいた。その間にバーサンの顔が変わって行くのを、わたしは見ていた。土気色になり乾燥していく。親しくお世話していた人が「死人」にかわっていく……。

ましてや、東日本大震災で亡くなった方々の御遺体。損傷していたものあったという。笹原留衣子さんはボランティアとして、それをひとつひとつ、復元していく。できれば、ご家族にも清拭などに参加していただきながら。……いくつものエピソードを読みながら、涙がこぼれる。家族の急な死を受入れられなかったひとたちが、参加することで、死をうけいれられ、ちゃんとお別れできていく。

「震災から4週間、5週間が経っての復元。お会いするなきがらは、次第に厳しい状況になっていきます。膨張、損傷、損失、出血、腐敗臭、変色、変形、脱毛……。」

「ウジ虫がわいても復元するのは、日本でもわたしくらいかもしれません」

津波にあったなきがらの髪を何度も洗い、砂や海草をおとし、さらさらにする。お化粧ができる状態になるまで、1時間あまりマッサージ。、十種類くらいの化粧品をまぜあわせ、体温を失った肌になじませるため、手の甲であたためて、幾重にも重ねていく……

「一部白骨化したようななきがらも、お骨に沿って、ていねいに下地を作っていくと、きちんと故人のお顔に戻せますし、維持できます」

なによりも素晴らしいと思ったのは、そのようにマッサージをしていると、笑いじわが出てきて、それに合わせて笑顔を復元するということ。(その記述は何度も繰り返し出てくる)
笑顔の、いちばんいい顔でお別れして欲しい、と。

傷んだなきがらをみて、ショックを受けた家族。泣くこともできない。こどもには見せられないと思う。でも、笑顔に復元されたお顔をみて、思いきり泣き、「愛しているよ」「大好きだ」と伝え、ちゃんと死を受入れられ、お別れできる……。
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本を読んで、泣きながら、それでも読みつづけ、泣きながら、「あ、わたし、泣けてる」と思った。不謹慎かもしれないけれど、泣くことのできる自分を発見して嬉しかった。

バーサンの死後、あまり泣けていない。詩集『満月の夜、母を施設に置いて』を読んだとき泣いたけど。
前は、泣き虫だったわたし。何かにつけ泣いていた。でも、最近は泣けない。年を経て感性が鈍くなったのか。長い間の介護で、喜怒哀楽を殺す術を身に付けたのか。(在宅介護をするときには、穢い、汚い、いやなことも、つらいことも、いっぱいしなくてはならなかったから、感情を殺していちいち嘆き悲しまないような癖が付いていたと思う)
それとも、ここ数年のんでいる抗うつ剤のせいか? 
(ある種のクスリは、辛い思いを軽減されてくれるけれど、喜びも感じないで、世の中が灰色に見えるのだ。更年期障害の鬱傾向のとき処方されたクスリがそうだった。今回の「抑鬱を伴う適応障害」では、先生に過去の経験をつたえ、別のクスリを処方してもらっている。これはアッパー系でやる気が出るクスリというのだけれど)

泣くのは、泣けるのは、悪いことじゃないと思う。
何も感じないよう感情を殺していると内に籠る。
その方が悪い。体に来る。
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by hidaneko | 2013-03-28 23:16 | ほ ん | Trackback | Comments(0)
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