緋色の花桃(草木への思い)

Gサンのお父さんが挿し木で増やした八重の花桃。

Gサンのお父さんは働き者だった。山の村で農家をやりつつ、若い頃は写真屋さんをやっていたという。小学校の入学式や卒業式、遠足や運動会などの行事の写真を撮っていたという。そういえば、まだカメラを持っている家の少ない頃、学校の行事には学校と契約している写真屋さんがついてきて写真を撮り、紙焼きしたものに番号を振ってを廊下に張り出して、希望者がその番号を申し込んで購入する、ということがあった。

わたしが知り合ったころ(というのは結婚したいとの挨拶に連れて行かれたとき)には写真屋さんをやめていたけれど、家の裏山を登って山の上の田畑を耕したり、山菜をとってきてくださったり、下の田んぼの脇のため池で鯉を飼っていたり。そうそう、はじめて伺ったときには牛も鶏も飼っておられたのだった。朝早くから日が暮れるまでよく働く人だった。

また、Gサンのお母さんのほうは、優しくて、花が好きな方だった。下の田んぼを畑に直したときには、野菜の脇に花を植え、お世話していた。家の周りには花が絶えなかった。

結婚してしばらくして、今現在住んでいる家に引っ越してきてからのこと。夏休みに伺ったとき、お父さんが花桃を挿し木して、たくさん根付いたというので分けてもらってきたのだった。3本もらってきて、一本は奥に、2本は門の近くに植えた。3本とも上手く根付いて、かなり大きくなったのだけれど、門の近くの2本のうち1本はやがて枯れてしまった。傷から雨水が入り、そこから腐っていったのだと思う。
のこりの2本は大きくなった。1階の屋根より大きくなった。門の近くのは、わたしの仕事をする部屋のすぐ外にある。花の季節、曇りガラスを閉めていても緋色の花の色が窓辺を明るくしてくれていた。

この花桃は八重だから実はならない、と思ったけれど、夏に小ぶりな実をつけた。全部の花が実をつけるわけではなく、結実率は悪かったと思う。受粉も農薬散布も何もしない、天然放置だから当然だろうけど。

梅の実ほどの大きさの実は青から黄色っぽく熟れていったが、表面が硬い毛で覆われていた。市販の食用の桃も細かな産毛でおおわれているが、この花桃の毛はもっと荒くザラついた感触だった。
「食べられるかしら?」と、毒ではないはずだから食べてみたけれど、皮をむくと種が大きく、食べるところはほとんどない。甘みより酸味が勝ち、おまけに、虫食いだらけだった。

それでも、桃の香りは高く、ジャムならいけるかも、と一度ジャムにしたことがある。皮をむいて種ごと煮て、裏ごしをするように種と実を分けた。手間がかかったので、2度とする気はなかった。美味しかったけどね。

春になると、梅の次に緋色の花桃が花開く。空が緋く染まる。
やがて、なぜか葉が縮れて落ちてしまう。それからまた葉が生えるのだ。「桃の葉はあせもに効く」とバーサンがいって、お風呂に入れてことがある。あせもに効いたかどうかは確かではないけれど、桃の葉の香りのするお風呂はよかった。

花桃は、山のお父さんと、お母さん、そしてバーサンにまつわる、思い出の木だったのだ。
f0016892_20071932.jpg
花の盛りの花桃の写真が見つからない。
そいえば、どこかにバーサンの枕元に花桃を飾った写真があったはず…と探したらありました。
こちら、2009年5月1日 の日記。4月16日に撮った写真だった。
右下に伸びているのが花桃。写メの色味が悪く真っ赤に見えるけど、本当は濃い桃色です。

追記:
この木が伐採されると決まったとき、わたしも挿し木をしようと枝を採り、挿してみたのだけれど、時期が悪かったのか、どれも発根して根付くことはなかった。枯れちゃった。でも、木の下に実生が何本か生えていた。それを植木鉢に移して世話している。実生は挿し木より年月がかかるだろうけど、花が咲くといいなと思っている。



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by hidaneko | 2016-12-08 20:16 | 草木への思い | Trackback | Comments(0)
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