雪に越される」という言葉があると聞いた。
家や田畑の冬支度がすまないうちに雪が降り、すべての手順に狂いが生じること。
中越地震の被災地にも、すでに雪が降っている。
仮設住宅のあの屋根、湿った重い雪に耐えられるのだろうか。
それよりも、被災地の家屋、かろうじて地震にも余震にも耐えたとしても、
これから冬が越せるのだろうか。
例年、一冬に5,6回は雪下ろししないと家がつぶれる豪雪地帯だ。
避難指示や勧告がでている地域では、雪下ろしのために入ることが出来ないだろう。
友だちの実家。栃尾の山間部。
本震ではすこし直せばよかった家が、くり返し襲った余震で倒壊寸前になったという。
「実家に帰るたびに、家が傾いていくの。つらかったわ。
二階へ上がる階段が八の字に開いて段がはずれて、上れないの」
もうひとりの友だち。実家は川口町。
その地区の区長をしているので、被災者の面倒を見なければならない。
その避難所が、地区の集会所で、自宅の前だという。
「自分も被災者なのに、家のことは放っておいて、被災者の面倒をみてるの。
家が、だんだん傾いて、つぶれて行くのを、目の前に見ながら…」
美味しいので名高い魚沼産コシヒカリを、減農薬で作っていた農家。
棚田が崩壊して底が抜け、道も寸断され、復旧のメドもたたない。
また稲作を続けられるか、見通しもたたないという。
山間地にへばりつくようにして暮らしてきた生活の基盤が、
文字通り根こそぎやられてしまったのだ。
中越地震の被災地復旧支援策としての特別立法の設定が見送られた。
阪神淡路では、特別立法が設定され、復興事業などで国の補助率を大幅にアップ、
対象事業も拡大したと聞く。
首相は視察に来たとき、すぐにでも特別立法を設定するような口ぶりだったが…。
「死者が少なかったからねえ」東京から来た人が言っていた。
「知事が新人でしょ。地震の翌々日がデビューだったから、中央との交渉が下手なのね」
これは近所のおばさん談。
地震から二ヶ月、避難所もすべて閉鎖された。
でも、これから冬は長い。