記憶の断片ー1

読み手のあるブログに、いや、世界全体に発信しているとも言うべき、どこの誰が読んでいるかも分からないブログに、説明抜きに、極私的なことをあえて書く。
「あたしのブログに、あたしが何を書こうと勝手じゃない?」というほど居直ったわけではない。ここんとこ、伏流水のように、心の底をながれ、ときとして湧き出してしまう感情を整理するために文字化したいのだ。記述は独断と偏見に満ちているだろう。それは承知のこと。意味不明のこともあろうかと思いますがどうぞ看過くだされ。日々ぽつぽつと書いて行くつもり。

【バーサンのこと】
バーサンは昔からバーサンだったわけじゃない。本名はMちゃん。かなり昔に合併した隣町に生まれた。藩制時代、その町は、わたしが住む所とは川をはさんで別の藩に属していたと言うものね。近いけれど、方言も微妙に違うらしい、わたしの耳にはわからないけど。えーと、何人兄弟だったのだろう。長女です。下に弟と妹がいるのは知っている。わしの叔父さん、叔母さんね。(叔父さんは亡くなり、年齢が一回り下の叔母さんはまだ存命)
明治42年、5月2日生まれ。「本当は4月30日なんだけど、名前を考えるのに時間がかかって、届の日に遅れたので、生まれた日付を変えたんだ」とは、以前きかされたこと。まあ、長女だから、かわいがられたと思う。頭が良くて、学校がすき。本も好き。(本が好きというあたり、血筋か環境か、わたしも似ているかも知れない)。小学校の時、学校から帰ると歩いて小一時間かかる県立図書館まで、川にかかる長い橋を渡ってきたと言う。「図書館の人が、本を読んでくれるのがおもっしぇてね」アンデルセンや何かを読んでもらったらしい。(大正時代の初期のころよ。そのころから読み聞かせや語りがあったの、すごいと思う。また、それに引かれて子どもが行くと言うのも、すごいと思う)。

その当時は、小さい時から、家の手伝いをするのは当たり前。Mちゃんも、妹や弟の面倒をみたり家のことを手伝ったり。「家の前に川へ鍋を持って行って、縄を束ねたタワシでこするんだ。鍋の底までこする。ピカピカにするのが競争みたいできそったものだ」とも、言っていたっけ。(それは介護が始まって、まだ日の浅いころ、おやつの時間にベッドに並んですわって、ゆっくりと聞いたこと。それ以前、元気なころは、子どもの頃の話など、きいたことなかったもの)男の子に混じって遊んだとも聞く。

とにかく、学校がすき。先生が尋常小学校でおわるのはもったいないと、親を説得してくれて、女学校に進んだんだ」Mちゃんのアルバムには、袴姿のMちゃんや、テニス(大正時代にテニス!)の仲間と並んで写してもらった写真がある。当時の進学率はどれくらいだったのだろう。とにかく女学校へ行けるのは、珍しいことだったと思う。長女で頭も良くて、自由気ままに育てられたように思えるけれど、でも、順風満帆だったわけでないと、耄けてから彼女の昔を知った部分もある。さくじろうの火事で家が焼け、貧乏のどん底に落ちたらしい。

「さくじろう火事だて。着物も帯もみーんな焼けてしもたけど
 女学校でてありがたかった。親も苦しかっただろうが
 女学校だしてもろて、ほんねありがたかった」

「男親はだめだね。つぶれてしもた。
 昼間ッから、頭から布団をかぶって、頭が病める(あたまがいたい)って寝ている。
 かあちゃんは、苦労したがんだ。とうちゃんはだめだ。
 かあちゃんは、ぼてふりでも、魚売りでもなんでもして…
 さんざん苦労して、中気になって。短かったけど中気になってしもて」
「男親はだめだ。つぶれてしもて。頭が病めるって、ふとんかぶって…」
くりかえし、くりかえし話すバーサン。

女学校を出してもらったために、教員になることができ、妹や弟に仕送りができたという。あのころの女教師、それなりに尊敬もされ、プライドも高かったと思う。アルバムに同僚の男子教師がビオラを弾いている写真があった。昔の田舎である。普通の庶民より少し上の知的生活をしていたのかも。耄けてからも「今日は子どもたちにキビ細工の材料を買ってやらなくちゃ」とか「今日は卒業式だから、でかけるんだ」とか、言っていたこともある。「今日は学校へ行く日?」というのは、繰り返し聞かれた。
教師としてなのか、女学校時代の、良き時代を懐かしんでか、(というより、バーサンにとってはMちゃんの時代が、今、耄けている今日、感じている現実なのよね。……昨今は、もう、語ることもできなくなっているけれど)。つづく
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by hidaneko | 2010-06-12 23:19 | かぞく | Trackback | Comments(0)
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