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なにもしてあげられることがない
常夜灯に明かりを落とした部屋のベッドで
バーサンが「あー。あー」と声をあげている。

ちかごろは、ほとんど声も出さなくなっているのに
「あー。あー。あー」

呼吸が苦しそうなようでもなくて、ただ
「あー。あー。あー」

「どうしたの?」と、顔をのぞき込めば
目元に、涙。薄明かりに、かすかに光って見えた。

ああ、死に行くことって、怖いよね、悲しいよね。
でも
あなたの孫娘が言っていたよ
「おじいちゃんも まっているから」
彼女は、祖父の顔を知らないはずなのに。
「おじいちゃんがまってるよ」

死に行くことって、怖いのね、悲しいのね。
でも、あなたの愛娘も待っているから、きっと。
あなたが老後を見て欲しかったのに、21歳で身罷った美人の姉娘。

「あー。あー。あー」
不出来の末娘は、そっと手をなでるしかできない。
「だいじょうぶだよ、だいじょうぶだよ」
何の根拠もないけれど、つぶやきながら、そっと手をなでる。

生きながらの骨格標本みたいになっちゃった、痩せた手をなでる。
お菓子の家で魔女がだまされたという鳥の骨も
これほどは痩せてなかっただろう、と想いながら。

「あー。あー。あー」
おやすみ、バーサン、もう日付が変わる。
おやすみ、バーサン、明日は目を覚ましてね。

あと何日、あなたの娘でいられるだろう。
おやすみなさい、かあさん。


# by hidaneko | 2012-05-20 00:25 | かいご | Trackback | Comments(0)
2012年5月19日(土)助けられ、支えられて介護
朝8時過ぎに、M田先生が往診に来てくださった。
昨日、「土曜の午後から出張で、土日と留守にするのですが、朝、うかがいます」とおっしゃっていたのが、ご自身の医院の診療時間前にバーサンの様子を見に来てくださったのだ。
バーサンは朝の6時半から落としていた栄養剤が終り、薬を入れ、湯冷ましを入れている最中だった。先生はバーサンの様子を見て、血圧、体温、酸素を測り、聴診器をあて、浮腫の引いた様子を確認し
「落ち着いているようですが、何かあったら、いつでも電話くださいね。僕がいなくても、当番の先生がいますから」って。
毎日来てくださるM田先生に頭がさがる。
「先生がいてくださるので心強いです」とお伝えする。
こういう先生の支えがなくては、在宅で看取りはできないだろうな。

午前9時半前、訪問看護師さんが来てくださった。
本当は、今日は休みのはずなのに、昨日「痰を引くのだけでもお願いします」と頼んだのに応えてくださったのだ。バイタルを測り、痰の吸引をしてくださる。わたしもバーサンがK名病院に入院している時に習ったし、退院してきてからもだいぶ慣れたけど、気管支の奥までは無理なのだ。プロに一日一度、しっかり引いてもらうと、あとがやりやすい。肺をマッサージし、でやすくするテクニック、すごい。

わたしが介護するわきに、かならずモグちゃんがいて、手伝ってくれる。
朝の栄養剤を入れるところから、薬を溶いていれたり、器具を洗ったり。細かな気配りが嬉しい。「昼、何食べる? 夕御飯は何々にしようか」などと聞いて、近所のスーパーに買い物にいってくれる。その間、わたしは休むことが出来る。キッチンタイマーを33分33秒かけて、寝たりできる。

「父さんって、なんにもしないよね。今日は休みなんだから、夕御飯作ってください、って言おうか?」とモグが言ったけれど「こっちから言うと、命令されたとかへそ曲げるから、黙ってて」とわたし。
そのGサンが自分から「今日の夕御飯はオレが作るから」って言ってくれた! 午後、バーサンのおむつを替え、痰を引いて、安静に休ませて、つぎのおむつ替えまで3時間の時間がある。車で出掛けた。

街は昨日の雨にあらわれ、みどりが鮮やかだ。サツキの季節、あちこちの庭や街路樹に紅やピンク、白の花が咲き乱れている。陽光が明るくて、海は青くて、まぶしいくらい。
川を渡って、美味しい珈琲屋さんへ。この店が5月から禁煙になって嬉しい。本日のサービスの2種類のうち、軽い方を頼む(いつもなら濃い方を頼むのだけれど、なにしろ胃痛が…)。自家焙煎の美味しい豆を100g挽いてもらう。
帰り道、大型店に寄って下着を買う。ワコールトリンプウイング20%オフだっていうから。ゴムの伸びたパンツじゃ気合いが入らないからね。
急いで帰って、ジャストタイム。3時間弱の気晴らしの旅でした。

Gサンが作ってくれた夕御飯。豚キムチ(豚肉とキムチを炒めたもの)…。わたし、ふだんからキムチは食べないのに。昨日だって胃痛だって言ってるのに…。ほんっと家族のこと見てないのね、聞いてないのね、と思ったけど、あとでGサンが「作った後でおまえが胃痛だって言ってたのを思い出した」と言ってきたので、ゆるす。(笑)

みんながいるから、介護が出来る。
支えてくれるから、最期を看取れる。
ありがとう。


追記:
経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を測るために、指にパチンとはめて測る測定器(パルスオキシメーター)をM田先生から借りていた。マッチ箱を二つ重ねたくらいの小さな黒い器具である。
昨夜、寝る前にバーサンの痰を引いて、効果をみようと(痰がとれて呼吸が楽になると目に見えて酸素の量が増えるんだ)測定器を探したけれど、ない。ベッドサイドに必要な道具を載せておくテーブルを置いてあるのだけれど、そこにない。落として、猫が転がして遊んだ?とも思って、床に這いつくばってさがす。バーサンの体の下になっているかも、と布団をはがして探す。ない。……深夜に青くなる。先生がせっかく貸してくださったのに、なくしただなんて、どうしよう…と、眠れない夜を過ごした。弁償すればいいじゃない? とも思いながら、変な夢ばかり見ていた。
今朝、往診に来た先生「これ、昨日、持って帰っちゃって」カバンから測定器を取り出し…。ああ! よかった。ほっとした。
# by hidaneko | 2012-05-19 22:57 | かいご | Trackback | Comments(0)
晴れた
久しぶりに雑草と戯れてこよう。
庭にも、選択☆、じゃなくて、洗濯干し以外、出てなかったもんな。
裏庭の梅の木にも、気がつけば小さな青い実が…


# by hidaneko | 2012-05-19 10:41 | きせつ | Trackback | Comments(0)
胃痛、来た
わたくしめ、午後から胃痛〜、久々・・・
大丈夫と思っても、やっぱり体に来るのかな


バーサン、水分制限しすぎで痰が硬くなり、素人では吸引しづらい。呼吸困難ぎみ。酸素飽和度70にまで低下。訪問看護師さんの腕に感動。90まで回復したもんね。
訪問看護師さん、今回のバーサンの退院後の依頼が急だったので、スケジュールがいっぱいで、土日は来れないといっていたけど、急遽、痰引きだけに来てもらうことにする。

午後、往診。水分の件、多少脱水ぎみなので、一日600ccに増やす。「栄養剤200+水分100」を朝夕に。また、朝夕に処方されていた利尿剤を夕方はやめにする。これでおちつくかな。

それにしても、少しのこと(水分の多少)が大きく体調の反応として出てくるのにびっくり。

More:酸素飽和度について
# by hidaneko | 2012-05-18 22:04 | Trackback | Comments(0)
2012年5月17日(木)ちょっとつかれた
早朝覚醒がたまらん。
連日、日付が変わってからの睡眠で
4時5時だもんな。
ほんとはもっと寝てていいんだけど
マイスリーの切れる時間に目覚めって
笑っちゃうくらい。

バーサン、まだ生きてるよ、息してるよ。
今日、クローズアップ現代で
終末期医療について取り上げてた。
わが家の場合と同じだなあ、と思いつつ横目で見てた。
(横目=バーサンのお世話中だったから)

胃ろうにしちゃうと大変なんだよね。
どこでやめるか………

クローズアップ現代
「人生の最期 どう迎える?~岐路に立つ延命医療~」
今年3月、日本老年医学会は「患者本人のためにならない場合には治療の差し控えや撤退も選択肢」とするガイドラインを発表した。特に議論となっているのは食べられなくなった患者のお腹に穴を開け、胃に直接栄養を流し込む「胃ろう」。寝たきりで意思表示もできないまま何年も生きる患者を前に、「本人は生きることを本当に望んでいるのか?」と悩み、胃ろうの中止を希望する家族が出てきている。患者本人の意思を確認できない中で、医師や看護師は患者の人生や家族の願いにどう寄り添えばいいのか。模索する現場を取材し、変容する終末期医療の現状と課題を探る。


日本老年医学会なんてあるの、始めて知った。
検索してみて、サイトもあったけど、わかりにくくて(^^ゞ
こっちの方に共感する部分が……。

バーサンが経管になって悩んで相談した時、R君が言っていたんだ。
「無治療という方法もあったね」って。
>「治療の差し控えや撤退も選択肢」
R君が終末期医療に詳しい分けでもないだろうけど、
これに当たるのかな、と思った。

本人に意思の疎通がむずかしいとき、
また、元気な時に意思を伝えてなかった時、
選択は家族にのしかかる。
どうしたら、ご本人の意思に添うのか、
どうしたら、ご本人は喜ぶのか……

今、バーサンは水分の制限をしている。
水を多く与えると、痰が多くなって呼吸が苦しくなる。
痰を引いてあげるのは、その間、機械で吸引するから
ご本人の呼吸が苦しくなると看護師さんがいっていた。
痰を引いた後は、呼吸が楽になるのだけれどね。
「ごめんね、ごめんなさいね」と声をかけながら手技をしてる。
水分を制限するのは、脱水になる危険と背中合わせだけど
痰の量はすくなくなる=呼吸が楽になるみたい。

栄養補給も流動食というか、ミルク状のものだから水分多い。
水分を制限することは、栄養剤も少なくするということ。
でも、それが、バーサンの呼吸が楽になるのにつながる。
びみょうなバランス。
# by hidaneko | 2012-05-17 23:45 | かいご | Trackback | Comments(0)


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